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佐藤創(アジア×医療スタートアップ / メプラジャパンCEO)さんがnoteに新興国の薬局事情を発表されました。
お許しを得て、イマトクメディックにて記事を転載させていただきました。
こんにちは!
メプラジャパンCEOの佐藤創(さとうはじめ)です。
今日は、前回ご紹介した「新興国の医療提供体制」の中から、「薬局」について詳しくご紹介します!
↓↓ 前回の記事 ↓↓
前回の記事でもご紹介したとおり、新興国において医療を受ける際の最初の入り口は、クリニックではなく「薬局」です。まずは薬局で薬剤師が薦める薬を買って服薬し、それでも治らなければクリニックなどで医師などの診察を受けます。
次のグラフは、東南アジアの医薬品市場を描いたチャートです。年々増加しているのが一目瞭然ですね。人口と経済規模が市場規模に影響しています。
(このグラフは2014年までが実績値、それ以降は予測値。)
(Pharma Insight Briefings – Asia より引用)
今日は、東南アジアの中でも後進国であるカンボジアの薬局事情をお伝えします!カンボジアの例ではありますが、上のグラフの市場規模に限らず、東南アジア全体に共通している状況です。
カンボジアの首都プノンペンの中心地に、「メディカル・ストリート」と呼ばれるエリアがあります。薬局や医療機器・消耗品の卸会社などが集まっているエリアです。
プノンペン市内に数カ所ありまして、その中の1つ「オリンピック・マーケット」の近く(地図の赤丸)をご紹介します。(※ カンボジアではオリンピックが開催されたことがないのに、なぜか「オリンピック」と名のつく施設があります。笑)
メディカルストリートの一角。薬局がずらっと並んでいます。
少し分かりにくいですが、ここも両脇に薬局と医療機器卸が並んでいます。
薬局の種類・ランクも分かれており、お店ごとに品揃え、値段、管理状態などが異なります。
商品がむき出しで置かれていることも多く、きちんとした管理が出来ているかは疑問です。
次に、ややランクアップした薬局がこちら。
少しきれいめになり、管理もされている印象。
最後に、このエリアで一番人気の薬局がココ。
いつ行っても患者さんが多く、薬剤師(らしき人)も沢山います。
品揃えも豊富で、一通りの薬を入手することができます。
でも、カウンターの棚は雑然。。レシートは無し or 手書き。
一方、メディカル・ストリートには、医療機器・消耗品などのお店もあります。
ここは品揃えが多く、私がプノンペンでクリニックを開業したときも、ここで様々な機材を揃えました。
パキスタン製など、ほとんどの機材・消耗品は輸入。
ちょっと不思議な模型。
ベッドなども購入できます。これらもほぼすべて輸入品。
・・・・・・(センス)
カンボジアなどの新興国の薬局には多くの課題があります。
その中でも大きな課題は次の 3つ。
(1) 処方箋なしで処方薬を購入できる!
(2) 偽物の薬(Fake drug)が流通している!
(3)薬剤師ではない人が薬を販売している!
ではそれぞれについてご説明します。
医薬品を大きく 2つに分類すると、「処方薬」と「OTC医薬品/一般用医薬品」に分かれます。処方薬は医師による処方箋が必要で、日本では処方箋がなければ購入することができません。
しかしカンボジアでは、医師の診察を受ける前に患者は直接薬局にやってきます。そこで薬剤師による簡単な問診(症状などについての質問)によって薬を提供するのですが、その中には「処方薬」も含まれます。患者は処方箋なしで処方薬を購入できるのです。さらに、非常に効き目の強い抗生物質などが薬剤師の判断で出されることもあります。
薬剤師の知識不足、問診や説明不足などによって適切ではない薬が提供されていることも多いようです。
カンボジアの場合、自国で製造している医薬品が非常に少なく、大半が輸入品です。それらはフランスなどの先進国だけではなく、インドネシア・インド・パキスタンなど様々な国から輸入されます。
その薬の中には、「偽物の薬(Fake drug)」が含まれていることがあります。成分が不十分なものや、まったく効き目の無い薬です。薬局側も知らずに(見分けがつかずに)販売していることも多いです。
また、製造技術が足りないために、正規品の薬であっても成分にばらつきがでて効き目が一定ではないことも多いです。同じパッケージの薬を買っても、錠剤ごとに効き目が違っているようなイメージですね。
さらに、本物の薬だったとしても、医薬品の管理状況にも課題が多いのが現状です。温度や湿度の管理がなされておらず、また期限管理もずさんな薬局もあります。
課題(1) でご説明したように、処方箋なしで「薬剤師の判断」で処方薬が提供されることがあります。しかし!なんと、その「薬剤師」が薬剤師ではないことがあります。
薬局経営をコンビニ経営などの小売業と同じように考えている人たちが、コンビニで食料や水を売るのと同じ感覚で薬を販売しているのです。薬局を開業するためには薬剤師の免許が必要なのですが、免許貸しをしてその薬剤師は別の薬局・病院で働いていることが多いです。その場合、薬局には薬剤師がおらず、医療者ではない人がこれまでの経験と感覚で薬を販売しています。
保健省の査察や取り締まりなどはあるものの、まだまだ薬局が抱える課題は大きいですね。
実際に、いくつかの薬局で薬を購入してみました。
カンボジアの薬局では、薬はバラ売りが一般的。必要な日数分のシートをハサミ等で切ってから販売します。薬の説明が書かれた薬情・添付文書なども無く、もらったものを言われたとおりに飲むだけ。
カプセルタイプの場合は、ボトルから必要な個数だけ取り出してビニール袋に入れて提供。
グローバルブランドの薬も多く流通しています。ただし値段は他の新興国製の薬よりも高くなるので、どれを買うかは患者が選択します。
カンボジアは以前フランスの植民地だったこともあり、医療や薬においてもフランスの影響が強いです。そのため、フランス製の薬に対する信頼感も高くなっています。
写真の商品に貼ってあるシールには、ディストリビューター名(DKSH)と保健省からの販売流通許可番号が記載されています。すべての製品の箱には同様のシールが貼られています。
ちなみに、3つの薬局で「下痢」という形で薬を買ってみましたが、それぞれで出された薬はバラバラ。しかも多分、薬剤師ではなさそうなおばちゃんがパッと出してくれました。3日分で 約250円〜500円ぐらいの価格でした。外国人だからとグローバルブランドばかり出されたので、もっと安いものはあると思います。
ここまでご紹介したように、カンボジアを始めとする新興国の薬局にはまだまだ課題が沢山あります。
薬局で正しい薬を正しく処方することができるためには、
・薬剤師の育成、医薬品情報
・法規制、免許制度
・店舗マネジメント教育
など様々なことが必要になります。
カンボジアの中でも、海外のマネジメント手法を取り入れて適正に管理がされている薬局も増えてきました。
カンボジア最大手の薬局(ドラッグストア)チェーン「Ucare Pharmacy」では、品質管理やITシステムによる販売管理なども行っています。
また、大阪の調剤薬局グループ「イマトクメディック」グループは、プノンペンでの薬局店舗運営に加えて、現地の医科大学と連携した薬剤師の教育プログラム、医師・薬剤師のための医療セミナー、日本の薬剤師のための海外研修プログラムなど教育面でも多くの取り組みをされています。(海外に興味のある薬学生・薬剤師さんはぜひ参加してみてください!)
また、スタートアップとしての課題解決への取り組みも増えてきています。
東南アジア各国で事業展開する mClinica(エムクリニカ) では、薬剤師向けSNSで最新の医薬品情報提供や教育を行い、また処方箋データ(画像)のデータ管理ソフトウェアの提供なども行っています。
医療の入り口でもある「薬局」の課題をいかに解決するか?
新興国においては非常にキーポイントです!!
今日はここまで!
それではまた次回!
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